2014年クラスの高橋 裕典(Yuuten)さんが、所属企業(味の素株式会社)での活動において、プロジェクトチームの中心メンバーとして、「平成26年度 地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を受賞されました

2015/01/09

1s-Yuuten Award of Minister for Environment.jpg今回 高橋 裕典(Yuuten)さんが受賞された「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」は、環境省が、平成10年度から、地球温暖化対策を推進するための一環として、毎年、地球温暖化防止月間である12月に、地球温暖化防止に顕著な功績のあった個人又は団体に対し、その功績をたたえるために行ってきたものです。
Yuutenさんは、味の素株式会社様からの企業派遣生として2014年秋に一橋ICSに入学されましたが、それ以前に所属企業で行ってきた「九州力作野菜®」「九州力作果物®」プロジェクトでの成果が高く評価され、この度、受賞に至ったということです。
今回の受賞に際して、Yuutenさんはその喜びと今後のプロジェクト活動についても大いなる意欲をもって、次のように語っています。

「今回、味の素㈱を含むプロジェクト共同体として受賞できたことが本当にうれしいです。関連する企業、農業生産法人を合わせると、約30社が表彰されたことになるからです。ビジネスを通じてそれぞれがつながり、さらに環境への貢献も認められました。一橋ICSでも勉強できる「CSV:共通価値の創造」という活動そのものです。今回の受賞をきっかけに、本ブランドの野菜・果物を通して、九州の農業をどんどん盛り上げていきます!」

また、そうした忙しい企業活動の中で、一橋ICSに入学を志望した動機や、現在のICSでの生活についても教えてくれました。

「今回の「九州力作野菜®」「九州力作果物®」プロジェクトのように、オープンイノベーションを実行できる人材になりたかったからです。オープンイノベーションとは、自社技術だけでなく他社や大学などが持つ技術やアイデアを組み合わせ、革新的なビジネスモデルや革新的な研究成果、製品開発につなげる方法です。本学のビジョンである "Best of Two Worlds:西洋と東洋、実践と理論、新しい経済と古い経済、持てる者と持たざる者など2つの異なる世界の間の架け橋となる"は、まさにオープンイノベーションにつながるものがあります。
実際に入学すると、特徴的な必修科目の他に、グローバル社会の共通言語である英語環境、多国籍なクラスメイト、これでもかというくらいのグループワークのオンパレードです。毎日がオープンイノベーションの実践の場です。 まだ3か月しかたっていませんが、この環境の中で1年学ぶことで、自分を大きく変えることができると思っています。」

Yuutenさん、
この度の受賞、本当におめでとうございます!

Yuutenさんには、その他、これまでの経歴や、今回受賞されたプロジェクトについて、さらに詳しくお話を伺いましたので、ぜひ以下もご一読ください。

● 大学では、どのようなことを研究されていたのですか?
バイオテクノロジーを専攻していました。 仕事内容が農業になったため、昨年1年間、社会人大学院に入学し、農業経営(農業版経営管理士)を学んでいました。

● 味の素株式会社での経歴をお教えください。
2000年に入社して、まず発酵技術研究所(川崎市)で6年間は、基礎研究をやっていました。サトウキビや澱粉などから作った糖液に発酵菌を加えて発酵させてアミノ酸を作るわけですが、いかに効率よく発酵させることができ、生産性をあげることができるのかを研究していました。つまり、アミノ酸をいかにたくさんつくるか、ということをやっていました。
川崎の後は、2006年から九州の佐賀市にあるバイオ工業化センターで、引き続き技術者として、研究所の成果を実際に工場に導入することをやっていました。われわれがスケールアップと呼んでいることです。
そして、2011年から工場から出る副産物を使って自由に事業開発してみるようにと言われ、同じ場所にある九州事業所勤務となりました。九州事業所は、世界最大級のアミノ酸発酵工場を有する工場で、低カロリー甘味料「パルスイ-ト」などの原料のアミノ酸を製造しています。

● 一橋ICS入学前の担当業務は、どのようなものだったのでしょうか?
アミノ酸の発酵の過程で出る副産物である「発酵副生バイオマス」の新規事業開発です。与えられたミッションは、アミノ酸を取り出した後に残った年間排出量4千~8千トンの副産物を低コストで再資源化することでした。

● 今回受賞された活動・業務の内容について、教えてください。
12月3日、環境省が後援する平成26年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰が執り行われ、対策活動実践・普及部門において、味の素㈱を含む「九州力作野菜®」「九州力作果物®」プロジェクト共同体として受賞しました。
味の素(株)九州事業所では、発酵副生バイオマスをこれまでも 肥料として利用してきましたが、水分を含んだ粘土状の固まりのため、重油を燃焼させて乾燥させていました。この発酵副生バイオマスを、堆肥に混ぜて堆肥の発酵熱を利用して乾燥させることで、重油の使用量を最大年間600キロリットル、CO₂排出量年間2,000トンの削減が期待できることを評価されました。
堆肥は、「牛ふん」などの有機物を微生物の力で分解して作る肥料ですが、その分解の過程で80℃程度の熱を発生します。この熱で発酵副生バイオマスを乾燥させるため、重油が必要なくなったのです。加えて、この堆肥で育てると野菜の糖度や遊離アミノ酸などが向上し、おいしくなることもわかりました(下図参照)。
そこで、イオン九州(株) や堆肥業者、イオン九州(株)契約農家と連携することで、発酵副生バイオマスを混ぜた堆肥を活用した農業のバリューチェーン(九州の農業を元気にする「力作」の輪)を構築しました(下図参照)。
この結果、生産者は収益を向上でき、イオン九州(株)はおいしい農作物を安定的に確保できるようになり、生産者、流通、消費者それぞれの「価値の最大化」が実現できます。もちろん当社も重油削減によるコストダウンが可能です。お客様を含め、関係者全員がハッピーになるプロジェクトです。このプロジェクトを通して、「九州の農業を元気にする」ことをスローガンに全員で頑張ってきました。


◀︎「九州力作野菜®」と成分分析値一例(糖度、うま味、甘みを示すアミノ酸)


◀︎九州の農業を元気にする「力作」の輪


● その業務の中で、どのようなご苦労がありましたか?また、その達成感についてもお聞かせください。


発酵副生バイオマスの活用に取り組み始めた1年目が本当に大変でした。何をすべきかわからない中で、いろいろな仮説を立て、並行させてがむしゃらに動きました。まさにカオス(混沌)です。2年目には仮説が取捨選択されて「九州力作野菜®」「九州力作果物®」プロジェクトに行きつき、3年目についに成果が出ました。農業は時間がかかるため、待ちの苦しみを存分に感じた分、達成した時の喜びは忘れられません。
ただ、今ICSで勉強していることを事前に知っていればもっと早くプロジェクトを進めることができたと思っています。たとえば、ICSの看板科目であるナレッジマネジメント(知識経営学)という授業では、「SECIモデル」というフレームワーク(思考の枠組み)を習いました。このフレームワークが本プロジェクトを進めてきたやり方にぴったり当てはまっていたのです。思わず授業中にのけぞってしまったほどです。「SECIモデル」を早く知っていれば、混沌としていた1年目が短縮でき、プロジェクトを加速化できたのに、と思います。
だからこそ、今後もICSでしっかりと吸収して、自分が創り出す未来のプロジェクトに応用できるようにしていきたいと思っています。
最後に、「九州力作野菜®」「九州力作果物®」が店頭にあったらぜひ食べてみてください!


<高橋 裕典>
1976年、広島県竹原市出身。東京工業大学生命理工学研究科バイオテクノロジー専攻修了、農業版経営管理士(佐賀大学)、中小企業診断士。味の素㈱九州事業所アグリ事業グループ(当時)、現在は一橋大学大学院国際企業戦略研究科に留学中。趣味はアメフト(佐賀大学アメリカンフットボール部監督)とまちおこし(「佐賀市はシシリアンライスでどっとこむ」初代シシリアンプリンスhttp://sicilianrice.com/)。好きな言葉は「Now or Never」。